「試用期間だから期間が終わったら雇えないよ」って、試用期間中の従業員さんに簡単に言っていいの?    試用期間でも雇用契約は成立していますよ    

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試用期間を設定しているから、合わないときは雇わなければいいんだ~なんて

思っている方はいらっしゃらないでしょうか?

試用期間といっても雇用契約は成立しているので、辞めてもらうときは解雇になることもありますよ。

※山道にて

試用期間でも自由に辞めさせることはできない

「試用期間」と聞くと、「試」という漢字が使われているから、お試し期間みたいな感じがするかもしれません。

お試し期間だから、

試供品みたいに簡単にもらって、今後必要なければ使わなければいいや

という訳にはいきません。

 

試用期間であっても、雇用契約は成立しています。

試用期間は、「解約権が留保されている雇用契約」という法的性質を持つと裁判では解釈されています。

 

 試用期間

労働者を本採用する前に、基礎的な教育・指導を行うとともに、能力や勤務態度などを観察する期間とされており、「不適格な場合は雇用契約を解約できる」という解約権付の労働契約と言われています。

これは、本採用前に一定期間を設け、勤務態度、能力、技能、性格等を観察し、最終的に本採用として雇用するかどうかを判断するというものです。通常は3か月から6か月を試用期間と定める企業が多いようです。

労働相談 試用期間中の解雇 – 福岡県庁ホームページ (fukuoka.lg.jp)

 

 

試用期間付雇用契約の法的性質については、試用期間中の労働者に対する処遇の実情や試用期間満了時の本採用手続の実態等に照らしてこれを判断するほかないところ、試用期間中の労働者が試用期間の付いていない労働者と同じ職場で同じ職務に従事し、使用者の取扱いにも格段変わったところはなく、また、試用期間満了時に再雇用(すなわち本採用)に関する契約書作成の手続が採られていないような場合には、他に特段の事情が認められない限り、これを解約権留保付雇用契約であると解するのが相当である。

※神戸弘稜学園事件 (H02.06.05最三小判)全文

裁判例結果詳細 | 裁判所 – Courts in Japan

 

試用期間に辞めてもらうには理由がいる

試用期間が解雇することを留保している雇用契約であったとしても、試用期間中に辞めてもらうにはそれ相当の理由が必要です。

 

①客観的に合理的な理由がある場合

②社会通念上相当であること

 

 

解約権留保付雇用契約における解約権の行使は、解約権留保の趣旨・目的に照らして、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当として是認される場合に許されるものであって、通常の雇用契約における解雇の場合よりもより広い範囲における解雇の自由が認められてしかるべきであるが、試用期間付雇用契約が試用期間の満了により終了するためには、本採用の拒否すなわち留保解約権の行使が許される場合でなければならない。

※神戸弘稜学園事件 (H02.06.05最三小判)全文

裁判例結果詳細 | 裁判所 – Courts in Japan

 

企業者が、採用決定後における調査の結果により、または試用中の勤務状態等により、当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至つた場合において、そのような事実に照らしその者を引き続き当該企業に雇傭しておくのが適当でないと判断することが、上記解約権留保の趣旨、目的に徴して、客観的に相当であると認められる場合には、さきに留保した解約権を行使することができるが、その程度に至らない場合には、これを行使することはできないと解すべきである。

※三菱樹脂事件(最大判昭48.12.12)全文

裁判例結果詳細 | 裁判所 – Courts in Japan

 

 

試用期間中の解雇予告

試用期間中であっても、入社して14日を超えると「解雇の予告」の適用を受けます。

労働基準法第20条により、使用者が労働者を解雇しようとする場合は少なくとも30日前にその予告をしなければならないと定められています。

予告を行わない即日解雇では、使用者は労働者に対し30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません。

労働相談 試用期間中の解雇 – 福岡県庁ホームページ (fukuoka.lg.jp)

 

 

(解雇の予告)
第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
② 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。
③ 前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。
(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

試用期間があったとしても、いきなり「辞めて下さい」とは言えないのですね。

誰がどう見ても、辞めてもらうのが妥当だろうという理由が必要です。

ただ「なんとなく合わないから」とかの理由では、試用期間があったとしても辞めてもらう理由にはなりません。

 

また、就業規則に試用期間の決まりがあるのであれば、その決まりを見せながら、話し合いをするのもいいと思います。

話し合いの場で注意をする場合は、念のため注意を書き出した書面を渡しておくと、あとあとになって注意したのに、「聞いてません」「知りませんでした」と言われることを防ぐことが出来ます。見ましたという「確認印」をもらっておくと、確実です。

 

 

<参考>

3-4 「試用期間」に関する具体的な裁判例の骨子と基本的な方向性|裁判例|確かめよう労働条件:労働条件に関する総合情報サイト|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

労働契約の終了に関するルール|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

兵庫労働局 | 解雇・退職 (mhlw.go.jp)

 

 

 

【足あと】

久しぶりに食べ過ぎてしまい、少々胃がもたれています。

美味しいものを前にしても、食べ過ぎには注意ですね。

 

 

【先週のにっこり】

温泉につかったこと

早寝早起きをしたこと