税理士の義務・・  税理士は社会的使命に照らし一般的に要求されるよりも高度の注意義務が要求

Pocket

昨日、TKCの研修会に参加してきました。

講師は、小出絹恵先生でした。

「実務に活かす裁決事例」という題目でのお話でした。

その中で、税理士の負うべき義務についての話があり、

税理士の負うべき義務があまりにも大きくてびっくりしました。

※小倉駅前にある祇園太鼓の像

 

税理士の使命

税理士登録されている方であれば受けていると思う「登録時研修会」で、書籍を渡されて、研修会がるのでご存じかと思います。

税理士法第1条に

「税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそつて、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。」

とあります。

日常の業務でお目にかかることはほとんどありませんが、重要な法律です。

 

税理士になるまでは、「税理士の使命」の内容が定められた法律があることを知りませんでした。

いろいろな研修会で、たまに出てくる「税理士の使命」の条文です。

 

税理士の負うべき義務

その他、小出先生の研修で紹介されていたのが

税理士法45条(脱税相談等をした場合の懲戒)

税理士法基本通達45条(脱税相談等をした場合の懲戒)関係

です。

ここでは、税理士の責任は「相当注意義務」です。

税理士法基本通達45-2では、「相当の注意を怠り」とは、税理士が職業専門家としての知識経験に基づき通常その結果の発生を予見し得るにもかかわらず、予見し得なかったことをいうものとされています。

 

これとは別に、もっと厳しい義務を税理士に要求している判決を教えてもらいました。

裁決事例(平成26年2月13日裁決)

損害賠償請求事件

東京地方裁判所平成24年(ワ)第24204号

平成26年2月13日民事第44部判決

口頭弁論終結日 平成25年11月21日

判決文全文はこちら   判決.docx

 

 税理士は,税務に関する専門家として,独立した公正な立場において,申告納税制度の理念にそって,納税義務者の信頼にこたえ,租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする(税理士法1条)ことから,依頼者と税の申告や納税の指導・助言をするなどの契約を締結した場合には,その契約の性質は委任契約あるいは準委任契約と解されるから善管注意義務を負うが(民法644条),法令の範囲内で依頼者の利益の最大化を考えて業務を遂行すべき義務を負い,上記社会的使命に照らし一般的に要求されるよりも高度の注意義務が要求されるというべきである。具体的には,委任された業務については,依頼者が述べた事実や提示された資料から判明する事実に基づいて業務を遂行すれば足りるものではなく課税要件等に関係する制度の確認を含む事実関係の究明をすべき義務を負い,また,委任された業務に関して依頼者が採るべき方法が複数ある場合には,依頼者が正しい判断ができるように適切な指導及び助言を行うべき義務を負うものと解するのが相当である。

 また,納税者との契約関係を前提としない不法行為の成否の判断においても,税理士には,債務不履行の場合と同様高度の注意義務が要求されることを前提とした過失の有無の審査が必要というべきある。

 

税理士には、「高度の注意義務」が課されていると言われています。

納税者の方が提出した書類をチェックするだけでは足りないのです。

なにか足りない、なにか必要ではないかと思ったら、

その提出を求めたか?

なんの書類の提出を求めたか?

真剣に求めたか?

何度も求めたか?

が裁判では争われるのだそうです。

それを怠ると、「高度の注意義務」違反になる可能性が高くなるそうです。

 

制限納税義務者の判定の場合の義務は

税理士が,一般人であれば相続人が日本国籍を有しない制限納税義務者であるとの疑いを持つに足りる事実を認識した場合には,日本国籍の取得及び喪失の要件を定めた国籍法の規定を確認するなどして,当該相続人が制限納税義務者であるか否かを判別するために必要な事実関係の究明をすべき義務を負うものと解するのが相当である。

税理士は,税務に関する専門家であるから,一般的には租税に関する法令以外の法令について調査すべき義務を負うものではないが,日本国籍を有しないことが制限納税義務者の要件として規定されている以上は,一般人であれば相続人が日本国籍を有しない制限納税義務者であるとの疑いを持つに足りる事実を認識した場合には,相続税の申告等に先立ち,当該相続人が日本国籍を有するか否かについて確認すべき義務を負うというべきである。

 そして,日本国籍喪失の要件については国籍法に規定されているのであるから,日本国籍を有するか否かについて判断するためには国籍法を確認することが不可欠であり,国籍法の規定を確認しなかったことは,税理士としての義務に反するといわざるを得ない。前記のとおり,税理士は,依頼者が述べた事実や提示された資料から判明する事実に基づいて業務を遂行すれば足りるものではないから,相続人の関係者からの事情聴取及び被相続人の戸籍の全部事項証明書の取得をしたことだけで税理士としての義務を果たしたということはできない

相続税法基本通達を確認したからといって,税理士としての義務を果たしたということはできない

 

税理士だから相続税法や相続税法基本通達を確認しただけでは、ダメなんですね。

制限納税義務者だとわかったら、国籍があるかないかが関係してくることは連想できます。

そうであれば、税理士の範ちゅう外である国籍法までも調べないと、「高度な注意義務」違反になってしまうのです。

納税者から聞いた事実だけで申告して、その申告に間違いがあったとしたら、もちろん「高度な注意義務」違反です。

 

身が引き締まる思いでした。

研修全体、先生の経験談をふんだんにもりこんだお話で、とってもおもしろく勉強になりました。

 

 

【足あと】

女性で活躍されている税理士の先生のお話を聞くのは、楽しいです。

オーラが出ているような気がして、「すごいな~」と目を輝かせて

見ておりました。

その先生からもらう言葉というのは、とても貴重で励まされ、うれしいです。

昨日もそのような言葉をもらえて、とってもうれしかったです。

 

【昨日のにっこり】

先生から嬉しい言葉がもらえたこと

とても興味深い話を聞くことができたこと

先輩税理士さんに質問して、疑問に思っていたことが解消したこと